「乳歯由来エクソソーム上清液のALSに対する治療効果」について報告された論文についてご紹介いたします。このエクソソーム上清液は当院でも取り扱っており、これまでも高血圧、糖尿病、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎、その他多くの疾患に対して、従来の保険診療では治療が困難であった患者さまに治療の効果が確認されています。
エクソソーム上清液は大きな可能性を秘めており、今後は多くの医師や医療機関において治療を目的としたエクソソーム上清液の活用が普及するものと確信しています。しかし、現時点では人体への中長期の影響や安全性などのデータが不十分であるため「試験用試薬」という扱いです。治療をご希望される方にはリスクや詳細を十分に説明させていただいております。
論文について
「SHED-CM: The Safety and Efficacy of Conditioned Media from HumanExfoliated Deciduous Teeth Stem Cells in Amyotrophic Lateral Sclerosis
Treatment: A Retrospective Cohort Analysis」
(「乳歯由来のSHED-CMがALS治療にどれくらい安全で効果的かを調べた研究」)
論文全文(英語):MDPI Biomedicines, 2024年10月号, 論文番号2193
SHED-CMとは?
SHED-CMは、抜歯された子どもの乳歯を寄付してもらい、その乳歯から取り出した幹細胞(SHED)を培養して作られる液体です。この液体には、神経を保護したり、体の免疫を整えたり成人の体内に非常に有益な成分が多く含まれます。細胞そのものを使わないため、免疫反応のリスクがとても少なく、安全に使えることが特徴で「小さな乳歯が持つ大きな力」を用いた治療法です。
研究の概要
対象者: 2022年1月から2023年11月までにSHED-CM治療を受けたALS患者24人(平均年齢55.2歳)
方法: 患者さんに週1回、平均123mLのSHED-CMを点滴で投与
調べたこと:
安全性: 副作用や体の変化(バイタルサイン、血液検査など)
有効性: ALSの症状の進行(ALSFRS-Rスコア)、握力、肺活量
結果結果
安全性
副作用は全体の3%と少なく、重大なアレルギー反応はみられず
血圧や血液検査の結果も問題はありませんでした。SHED-CMは安全に使えるとうい結論でした。
有効性
ALSの進行状態を測る「ALSFRS-Rスコア」の低下が、通常より緩和される事がわかりました。
4回目の投与後: スコア変化0.0点(ほぼ変わらず)
8回目の投与後: スコア変化-0.21点
12回目の投与後: スコア変化-1.77点
- 一部の患者さんでは、脚や腕の動き、歩きやすさが改善したという嬉しい報告も確認されました。
- これらの結果から、SHED-CMはALSの進行を遅らせる可能性があることが示されました。
この結果がどれほどすごいのか
ALSは、筋肉が徐々に弱っていく進行性の病気で、現在のところ完治する治療法はありません。しかし、SHED-CMのような新しい治療法が、病気の進行を遅らせたり、日常生活の質を少しでも改善したりする可能性があることがわかりました。この研究はまだ初期段階ですが、乳歯の力を借りた再生医療が、未来のALS治療の希望になるかもしれません。
今後の展望
この研究は過去のデータを振り返ったもの(後ろ向きコホート研究)なので、さらに詳しい効果や長期的な安全性を確かめるには、もっと多くの研究が必要です。当院でも、引き続きSHED-CMの可能性を追求し、患者さまに最新の情報を届けられるよう努めてまいります。
最後に
ALSと向き合う患者さまやご家族にとって、少しでも希望の光となる情報をお届けできれば幸いです。エクソソーム上清液は、脊髄損傷、脳梗塞後神経麻痺、そして小児脳性麻痺の子どもたちの知能や運動レベルの向上にも治療効果を期待することができます。今後はより多くの専門医がそれぞれの分野でエクソソーム上清液を治療に活用する医療が実現されることを願っています。